低温水暖房システム 暖房に対する考え方を変える

『暖房に対する考え方を変える』のコンテンツには、主に以下の内容が含まれます。

◦エネルギー規制
エネルギー性能を向上させるために、ヨーロッパには国ごとに異なる規制がある。
◦再生可能なエネルギー目標
エネルギー使用を減らすための厳しい目標は、ヨーロッパのビルオーナーに大きなプレッシャーを与えている。
◦温水パネルヒーターの革新
保有水量を減らし、より温度が高い温水ルートとフィンを接触させることで放熱量を上げる。今日の設計によれば、材料効率は過去のモデルと比べて最大87%アップしている。

エネルギー規制

ヨーロッパには国ごとに異なる規制があり、エネルギー性能向上目標は、各国について個別にEUで承認されています。各国で目標や測定方法が異なっているにもかかわらず、ヨーロッパ全体で、エネルギー消費レベルを低減させようとする動きがあります。

再生可能なエネルギー目標の数値

以下のように、一部には非常に厳しい目標もあり、再生可能エネルギーの使用や温室効果ガスの低減を最優先するという動きが、その基礎となっています。

フィンランド 28.5%~39% フランス 10.3%~23% ドイツ 9.3%~18% イギリス 1.3%~15% スウェーデン 39%~49%

エネルギー使用を減らすための厳しい目標値は、ビルオーナーに大きなプレッシャーを与えている

これは、単に政府の規制に従うのではなく、エネルギー使用を最低限に抑える方法を見つけなければならないという大きなプレッシャーをビルオーナーに与えています(グラフ1.1)。そしてヨーロッパで供給量が減少している貴重な資源(石油、石炭、およびガスなどの化石燃料)の価格が高騰し続けています。このこともエネルギーの効率化に影響を及ぼしています。

再生可能なエネルギーの目標例

環境に対する関心は高まっており、環境にやさしい製品や、そういったプロセスで作られた商品を選択する消費者たちも増大しています。今こそ、エコデザイン指令ErP2009/125/ECの指針に示されるように、暖房工業界が行っている方法が再評価されるべきタイミングなのです。消費者に対して私たちは、彼らが快適だと感じられる室内環境のために最もエネルギー効率が高く、かつ、最も費用対効果が高い方法を提供する責任があります。

我々には、快適な室内環境を作り出すために、最もエネルギー効率が高く、かつ、最も費用対効果が高い方法を提供する責任がある

今の世の中には、こういったエネルギー問題を解決できる暖房器具やシステムは多数存在しますが、どれを選んだらよいのか、消費者は依然として混乱状態の中にあるのです。

消費者、設備業者、設計者が「インフォームドチョイス(説明を受けた上での選択)」を行えるようにするためには、暖房器具やシステムについての正確な情報を常に受け取れるようにしておくことが重要です。低温水暖房システムの使用が増え続けている中、私たちは、温水パネルヒーターが今日の暖房技術産業において果たしている重要な役割を説明するために、このコンテンツを作成しました。

図1.1 新しい建物のエネルギー性能を改善するため、各国で示されたエネルギーゼロに近づけるための建物基準ロードマップ。 出典:REHVA欧州空調ジャーナル3/2011 *このロードマップは、2011年3月時点での情報に基づいています。

温水パネルヒーターの革新

温水パネルヒーターは、40年前の大きな円柱状のデザインから長い進化の道のりを歩んできました(図1.2)。初期の鋼板製温水パネルヒーターは平板パネル構造を有し、保有水量が大きいものでした(A)。次に、水路の間にコンベクターフィンを導入し、出力を上げる温水パネルヒーターが登場しました(B)。そして、保有水量を減らし、フィンと水路の数を増やす事で放熱量が増加しました(C)。最終的には、より温度が高い水路部分とフィンを接触させることで放熱量を上げることができる、という事が長年の研究により発見されました。さらには、六角形の水路を平らにしたことで、接触表面積が最大となり、放熱量も過去最高の結果を得ることができたのです(D)。

保有水量を減らし、より温度が高い水路部分にフィンを接触させることで放熱量が増加した

図1.2 鋼板製温水パネルヒーターの革新 1970年代から現在にかけて体積の容量が年々小さくなった結果、保有水量が少なくなり、省エネルギーで熱変化に対する反応が速くなった

最高で87%の数値アップ

近年、コンピューターによるシミュレーションも、エネルギー効率の著しい向上に役立っています。
➡ 例えば、温水パネルヒーターを通る温水の流れやコンベクターフィンへの熱伝導の最適化、室内への最適なふく射熱および対流熱の計算など。

今日の設計によれば、材料効率*1は過去のモデルと比べて最大87%アップしているのですが、いまだに、何十年 も前の時代遅れの温水パネルヒーターのイメージを抱いている人が多いのも事実なのです。(図1.3)

今日の設計によれば、材料効率は過去のモデルと比べて最大で87%もアップしている

図1.3 鋼板製温水パネルヒーターの技術革新 水路とフィンが増えて少ない熱質量になりました。最新の温水パネルヒーターは、従来のモデルと同じ温度でも、より少ない保有水量で放熱量を増加させます。さらに、材料の観点から見ると、材料効率*1が87%向上しています。 *1 材料効率[Watt/kg]:スチール(鉄)の1kgに対する放熱量を示します。 *2 平均温度ではありません。温水パネルヒーターの水路部分の形状とフィンの取付位置の工夫で放熱量が増加し、温水流量も増えたため、ヘッダー端部の温度が上昇しています。

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