ヨーロッパには国ごとに異なる規制があり、エネルギー性能向上目標は、各国について個別にEUで承認されています。各国で目標や測定方法が異なっているにもかかわらず、ヨーロッパ全体で、エネルギー消費レベルを低減させようとする動きがあります。
以下のように、一部には非常に厳しい目標もあり、再生可能エネルギーの使用や温室効果ガスの低減を最優先するという動きが、その基礎となっています。
これは、単に政府の規制に従うのではなく、エネルギー使用を最低限に抑える方法を見つけなければならないという大きなプレッシャーをビルオーナーに与えています(グラフ1.1)。そしてヨーロッパで供給量が減少している貴重な資源(石油、石炭、およびガスなどの化石燃料)の価格が高騰し続けています。このこともエネルギーの効率化に影響を及ぼしています。
環境に対する関心は高まっており、環境にやさしい製品や、そういったプロセスで作られた商品を選択する消費者たちも増大しています。今こそ、エコデザイン指令ErP2009/125/ECの指針に示されるように、暖房工業界が行っている方法が再評価されるべきタイミングなのです。消費者に対して私たちは、彼らが快適だと感じられる室内環境のために最もエネルギー効率が高く、かつ、最も費用対効果が高い方法を提供する責任があります。
今の世の中には、こういったエネルギー問題を解決できる暖房器具やシステムは多数存在しますが、どれを選んだらよいのか、消費者は依然として混乱状態の中にあるのです。
消費者、設備業者、設計者が「インフォームドチョイス(説明を受けた上での選択)」を行えるようにするためには、暖房器具やシステムについての正確な情報を常に受け取れるようにしておくことが重要です。低温水暖房システムの使用が増え続けている中、私たちは、温水パネルヒーターが今日の暖房技術産業において果たしている重要な役割を説明するために、このコンテンツを作成しました。
温水パネルヒーターは、40年前の大きな円柱状のデザインから長い進化の道のりを歩んできました(図1.2)。初期の鋼板製温水パネルヒーターは平板パネル構造を有し、保有水量が大きいものでした(A)。次に、水路の間にコンベクターフィンを導入し、出力を上げる温水パネルヒーターが登場しました(B)。そして、保有水量を減らし、フィンと水路の数を増やす事で放熱量が増加しました(C)。最終的には、より温度が高い水路部分とフィンを接触させることで放熱量を上げることができる、という事が長年の研究により発見されました。さらには、六角形の水路を平らにしたことで、接触表面積が最大となり、放熱量も過去最高の結果を得ることができたのです(D)。
近年、コンピューターによるシミュレーションも、エネルギー効率の著しい向上に役立っています。
➡ 例えば、温水パネルヒーターを通る温水の流れやコンベクターフィンへの熱伝導の最適化、室内への最適なふく射熱および対流熱の計算など。
今日の設計によれば、材料効率*1は過去のモデルと比べて最大87%アップしているのですが、いまだに、何十年 も前の時代遅れの温水パネルヒーターのイメージを抱いている人が多いのも事実なのです。(図1.3)