インタビュー❸ Jarek Kurnitski教授博士(ヘルシンキ工科大学)
Jarek Kurnitski教授博士は、HVAC分野におけるリーダー的科学者であり、現在はフィンランド・イノベーション基金、Sitraでトップのエネルギーエキスパートとして勤務している。
ヨーロッパのREHVA(欧州空調換気設備協会)受賞科学者として、300本近い論文を発表している。
暖房業界では、低温水暖房システムには大きな放熱器が必要だという、通説がいまだに存在しています。しかしながら、大きい方が良いなどということは決してありません。暖房用放熱器に関する私の比較研究の中で、極寒の冬期でも室温を一番快適な範囲に保つために必要なことは、放熱器のサイズではなく放熱量の迅速な変化であることが判明しています。実験では、両システムの室内温度を、快適かつ理想的な室内の最低温度である21℃に設定しました。チャプター4の図4.1から分かるように、0.5℃以下の内部熱利得を感知しても、熱質量が小さい放熱器は迅速に反応して室温を設定値前後に保ちました。
一方で、熱質量が大きい床暖房では、熱利得を感知してからの反応時間がかなり長かったのです。これは、床暖房が熱を放出し続けて、不快な大きい温度変化と共に、室温が最適温度をはるかに超えてしまうことを意味します。実際、床暖房の最適温度とされている21℃前後に室温を保つには設定温度を21.5℃に上げなければならない、ということが研究で判明しています。
0.5℃など小さな差だと思われる方も多いでしょう。しかし、この0.5℃の差を毎時間毎日、冬の間続けていくと、この差はどんどん広がっていき省エネルギーとは程遠いものになっていくのです。1℃の室温差は、約6%のエネルギー消費の差に相当します。熱利得への素早い反応とシステムにおける熱損失の少なさが、エネルギー効率の良い暖房システムの鍵です。中央制御(セントラルコントロール)は、一部の部屋を暖めすぎてしまい、結果としてエネルギーの無駄を発生させてしまうことがあります。研究によるこのような結果から、私は、システムにおける熱損失を減らすために低温水暖房システムや個別制御できる暖房用放熱器の利用をおすすめしています。つまり、言うまでもなく、温水パネルヒーターは最適な選択肢と言えるのです。