工場建設するなら知っておきたい!法律知識と建設のポイントをまとめました

工場を新しく建設する際は、企画や建設準備だけでなく関連する法律にも目を向けておく必要があります。工場を建設する際に知っておくべき、最低限の3つの法律をまとめてご紹介します。

工場立地法

工場立地法とは、工場を建設する際には敷地内に緑地などを整備し、周辺環境を保護することを義務付けた法律です。この法律が制定されたのは1973年のこと。高度経済成長期の中で急速な工業化が進み、さまざまな公害病や環境問題が表面化する中で制定されたという背景があります。
具体的には特定の工場を建設する際に生産施設の面積を一定の割合におさえ、一定割合以上の緑地を整備する必要があります。ここでいう「特定の工場」とは、以下の条件に該当する工場を指します。

  • 業種:製造業、電気・ガス・熱供給業(水力、地熱及び太陽光発電所は除く)
  • 規模:敷地面積9000平方メートル以上または建築面積3000平方メートル以上
参考:工場立地法施行令 | e-gov

上記の「特定の工場」に該当する場合、以下の場合は工場所在地の自治体へ届け出が必要となります。

  • 特定工場の新設や増設、用途変更をする場合
  • 特定工場での生産品を変更する場合
  • 建築面積・緑地面積を変更する場合
  • 環境施設を設置する場合

また、工場内における生産施設面積の割合は敷地全体の30〜65%以内、緑地・環境施設面積の割合は以下のとおりです。

  • 敷地面積に対する緑地面積の割合が20%以上であること
  • 敷地面積に対する環境施設面積(緑地面積を含む)の割合が25%以上であること

上記の基準が原則となりますが、工業団地の場合は特例で基準が緩和されているケースもあります。そのため、特に工場を新設する場合は自社工場が受ける規制・制限の内容を工場所在地の自治体に事前に問い合わせることが重要です。

建築基準法

建築基準法は建築物の敷地や構造、設備、用途など、建物を建築する際に守らなければならない最低限のルールを定めた法律です。この法律が存在しないと、建築物が無秩序に建ち並ぶことになり、人々の安全で快適な生活が脅かされることにもなりかねません。工場だけでなく住宅やビルなどすべての建築物は、この建築基準法に則って建設する必要があります。

工場を新設する場合、以下の3つの段階に分けて建築基準法に適しているかが審査・検査されます。

  • 建築計画の作成(設計)段階:建設計画中の建物が建築基準法に適合しているかを審査され、問題がないことを認められてから着工となります。
  • 施工段階:施工中も特定の工程が終わった時点で、基準に適合しているかどうかの検査が行われます。
  • 施工終了後:工事完了後、特定行政機関による検査が行われます。この最終検査で問題がないことを認められれば工場の使用許可が下りる仕組みになっています。

建築基準法では、主に以下のような内容について審査・検査が行われます。

  • 工場敷地内の安全が確保されているか
  • 地震などが起こった際に倒壊しない構造になっているか
  • 火事の際の防火設備や避難経路は確保されているか
  • 採光や給排水設備などの構造

建築基準法では上記の基準のほか、建物の安全性や用途、接道、容積率や建ぺい率などの形態など、さまざまな規定があります。規定は非常に詳細で多岐にわたるため、工場の新規建設時には建築士など専門家に相談することをおすすめします。

都市計画法

都市計画法は工場の立地に関する法律です。工場を新規建設する場合は、どこにでも自由に建てられるわけではありません。都市計画法はその土地が属する地域によって、建てられる建物と建てられない建物を定めています。そのため、どんなにいい場所があったとしても住宅地に工場を建設するようなことはできません。

都市計画法は計画的な施設整備や市街地開発のあり方について定めた法律であり、人々が健康で文化的な生活をおくるためにも、また機能的で健全ななまちづくりを行ううえでも重要なルールといえます。

都市計画区域は「市街化区域」と「それ以外の区域」に分けられますが、その中で工場の建設が可能なのは「市街化区域」のみです。市街化区域は、土地利用の観点から以下の12種類の用途地域に分かれています。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 工業地域
  • 準工業地域
  • 工業専用地域

この中で、工場を建てる場合に選ぶのは「工業地域」「準工業地域」「工業専門地域」の3つです。それぞれ用途地域によって、建設可能な工場の種類に制限があることに注意が必要です。

工業地域

工場の種類に制限はなく、火薬、石油、ガスといった危険物の貯蔵も可能な地域です。住宅や店舗の建設は可能ですが、病院や学校、ホテルなどは建設できません。

準工業地域

公害発生の可能性がない工場のみ建設できる地域です。危険物の貯蔵や、環境汚染につながるおそれがある工場は建設できません。住宅や店舗、病院や学校も建設が可能な地域です。主に軽工業の工場が並ぶ地域で、工業地域の周辺が準工業地域に指定されるケースもよくあります。

工業専用地域

工業地域と同様に工場の種類に制限はなく、かつ住宅や店舗、病院や学校、ホテルなどの建設ができない地域です。人の住む地域から離れることや輸送の利便性などから、海沿いや川沿いが指定されるケースがよくあります。京浜工業地帯や中京工業地帯といった大規模な工業地帯をイメージするとわかりやすいかもしれません。

その他の関連する法律

上記の3つの法律に加え、業種や営業内容、立地によっては以下のような法律をクリアする必要があります。

大気汚染防止法

大気汚染に関して、住民の生活環境を保護する目的で定められた法律です。工場から排出される大気汚染物質について、物質ごとに排出基準量が定められており、事業者はこの基準を守る必要があります。

振動規制法

工場や事業所において発生する振動に関する規制です。振動を発生する特定施設(金属加工機械、圧縮機、織機、印刷機など)を設置した場合は、区域や時間帯ごとに定められた規制基準を守る必要があります。また、特定建設作業(くい打ち機など、政令で指定された種類・規模の機械を使用する作業)を行う場合は、事前に市町村長への届け出が必要になります。

騒音規制法

工場や事業所において発生する騒音に関する規制です。機械プレスや送風機などの騒音を発生する機械を設置している工場が対象となり、区域や時間帯により音量の規制が行われています。

水質汚濁防止法

工場及び事業場排水される水および地下に浸透する水について、公共用水域の水質汚濁防止のために定められた法律です。人々の健康に害を与えるおそれのある物質や公共用水域の水質汚染につながる物質について規制が行われています。

コンサルタントや建設会社に相談するのも選択肢の一つ

工場建設に関わる法律は複雑なイメージがあり、また地域によっては条例の影響を受けることもあります。そのため、実際には専門知識のあるコンサルタントや建設会社に相談するケースも多いようです。ただ、その場合も最低限の法律知識が必要となります。まずはこの記事で紹介した法律について、チェックしてみてはいかがでしょうか。

弊社では工場の新規建設や運用に関するさまざまなサポートを行っております。工場に関するお悩みや疑問は、お気軽に当社までお問い合わせください。

https://www.morieng.co.jp/environment/

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