食品工場の異物混入対策、その重要性と具体的な方法を考える

食品工場の異物混入対策、その重要性と具体的な方法を考える

食品工場において、昆虫や金属片などの異物混入対策は非常に重要な課題です。今回は異物混入が起こる経路やその具体的な対策について、考えてみましょう。

異物混入対策の重要性

食品の異物混入は直接体内に摂取するものという性質上、心理的抵抗が大きくなりがちです。そのため、消費者は食品の異物混入に対して敏感になり、ニュースなどの報道でも大きく取り上げられるようになっています。また、近年は異物混入を発見した消費者によってSNSに写真や動画が投稿され、大きな問題に発展するケースも珍しくありません。

食品の異物混入は、たとえ消費者にとって健康被害が少ないと判断されるケースであっても、SNSやニュースなどで拡散されれば企業の信用を失い、ブランドイメージの悪化を招くことになります。

こうした理由もあり、万一異物混入が起こってしまった場合は、消費者のことを第一に考え、すぐに公表し自主回収に動く必要があります。当然、その際の回収費用や損害賠償、違約金などは企業の負担となります。食品工場における異物混入は、企業の信用を失うだけでなく、経済的にも大きな損失をもたらすことになるのです。

食品工場にとって異物混入はあってはならないことですが、その一方で異物混入を完全にゼロにするのは非常に難しいのが現状です。特に規模の大きな工場はそれだけ混入経路が多くなります。食品工場における「異物」とは、昆虫や金属片だけでなく、目に見えないカビやホコリなどさまざまなものがあり、すべてを完全にシャットアウトするのは不可能といえるでしょう。

このため、異物混入対策に取り組む際は「混入を防ぐために全力を尽くす必要がある」という意識を従業員全員に浸透させ、厳格な品質管理やルールづくりを行っていくことが重要となります。

食品工場で起こりやすい異物混入

食品工場における異物混入対策に取り組む際は、まずどのような異物があるのか、またその混入経路について知ることが重要です。食品工場において混入しやすい、代表的な異物には以下のようなものがあります。

昆虫など動物性の異物

食品に混入しやすいものとしてまず考えられるのは、昆虫など動物性の異物です。具体的にはハエやゴキブリ、ダニなどの昆虫のほか、その卵や幼虫、フン、またネズミの毛や寄生虫などがあげられます。これら動物性の異物は自ら動き回るうえに、鋭い牙によってアルミやポリエチレンなどの包装を食い破って侵入することがあり、非常に対策が困難な異物と言えます。

具体的な侵入経路としては、工場の換気扇や通気口などがあげられます。ただ、実際に食品に付着するタイミングとしては、厳しい品質管理や熱を加える調理が行われている製造工程は考えにくく、それよりは食品製造後の保管中、または陳列中に侵入するケースが多いようです。また、野菜などの原料に付着していた昆虫やその幼虫などが、処理不足のまま調理されて混入してしまうケースもあります。

金属片やプラスチック片など鉱物性の異物

針金や釘などの金属片、またプラスチック片なども混入しやすい異物の一つと言えます。これらは工場で使用している機械の一部が経年劣化により欠けたり、塗装の一部が剥離して混入するなどのケースが考えられます。また、清掃用のブラシの毛の一部やスポンジの欠片、ほうきの柄の樹脂被膜の欠片、工場のダンパーの鉄被膜など、意外なものが混入することもあり、その経路の多さから対策が難しい異物でもあります。

これら鉱物性の異物は、万一口にしてしまえば体を傷つけてしまう恐れがある非常に恐ろしいものです。特に乳幼児が飲み込んだ場合は命の危険にさらされるケースもあります。

カビやホコリ

カビやホコリなども、口にした人に重大な健康被害をおよぼす非常に恐ろしい異物と言えます。特にカビは食中毒だけでなく、感染症やカビ毒、アレルギー反応などを引き起こす原因になり、先に紹介した動物性異物、鉱物性異物以上の健康被害を及ぼす可能性があります。特に体の未発達な子供や乳幼児にとっては、大人以上に甚大な被害につながるケースがあり注意が必要です。

カビやホコリなどの異物は目に見えにくく、さらに混入経路や時期の特定が難しいという特徴があります。そのため、一度混入が起こってしまえば非常に大規模な回収につながる可能性もあり、そうなってしまった場合の経済的損失は計り知れません。

髪や爪など従業員に起因する異物

食品製造にかかわる従業員の髪や爪なども、混入リスクのある異物の一つです。これらの異物は消費者の健康被害や心理的抵抗という点でも問題がありますが、それだけでなく従業員のルールが守られていないというケースがあるため注意が必要です。ヘアキャップの身につけ方が不十分だったり、長く伸ばした爪がいつの間にか割れて混入したりといったことが考えられるため、チェック体制の強化やルールの遵守を再度徹底するなどの対策が求められます。

また、爪や髪だけでなく工場内で従業員が着用する制服や白衣なども、混入リスクになるため注意が必要です。長期間着用して古くなってしまえば、繊維くずが出たり、結び紐が切れやすくなります。そのため、クリーニングを行うだけでなく、一定期間使用した制服や白衣は、定期的に新しいものに交換する仕組みづくりも重要です。

異物混入の具体的な対策

食品工場における異物混入対策に取り組む際は、どのような点に気をつければいいのでしょうか。具体的な対策方法をご紹介しましょう。

帽子、マスク、白衣の着用ルールを徹底する

異物混入対策においてまず大切なのは、食品製造に関わる従業員の帽子やマスク、白衣の着用を徹底することです。人間の髪は1日に50〜70本ほども抜けると言われており、ヘアキャップなどでしっかりと対策しないと、非常に高い確率で異物混入が起こってしまうことになります。

帽子やマスクの着用を徹底するのは、髪や爪などの混入を防ぐことはもちろんですが、他の異物も含め、混入を防ぐための意識を徹底するという意味でも重要です。ヘアキャップや白衣の着用方法が不十分な場合、それ以外のルールもおざなりになっている可能性があります。「混入を防ぐために全力を尽くす必要がある」という意識をしっかりと浸透させるためにも、帽子、マスク、白衣の着用ルールを徹底するのは重要なポイントと言えるでしょう。

衛生区画化による流入経路削減

異物の混入を防ぐためには、清潔区域と汚染区域を分けるゾーニングも非常に重要な対策の一つです。例えば充填や盛り付け、包装などを行うエリアは清潔区域として、また原料の保管庫や梱包、仕分け、出荷などを行う場所は外部との接触がある汚染区域として分け、それぞれのエリアが接触しないように計画する必要があります。

汚染区域から清潔区域へ汚染物質を持ち込まないためには、外気の侵入を防止するエアカーテンやセンサーで自動開閉するオートスライドドアのほか、清潔区域の室内を陽圧化するなどの方法が有効です。また、従業員が清潔区域へ入る前には必ず手洗いやエアーシャワーなどを通るように、動線を計画するのも重要なポイントといえます。

マグネットやX線など検知器の使用を徹底する

金属片やプラスチック片の混入を防ぐためには、マグネットやX線検知器を利用するのも効果的です。マグネットは金属しか発見することができませんが、比較的安価に導入でき、粉末状や液体状、粘体などさまざまな形態の食品に利用できるメリットがあります。

X線検知器はマグネットに比べ高価ですが、金属片やプラスチック片だけでなくガラスや石、骨片などさまざまな異物に対して効果があります。また、パッケージの上からでも商品の状態を画像で確認できるため、商品の割れや欠け、欠品などを発見しやすく製品品質の向上にもつながるというメリットがあります。

混入経路や原因をしっかり理解し、対策に努めよう

近年は食品の異物混入がニュースになることも多く、消費者は特に敏感になっているといえます。異物混入を防ぐためには、混入経路や原因を把握し、しっかりとした対策を行うことが重要です。

弊社では工場の運用に関するさまざまなサポートを行っております。工場に関するお悩みや疑問は、お気軽に当社までお問い合わせください。

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