バイオマス発電とは?そのメリットと仕組み

再生可能エネルギーの一つとして、近年大きな注目を集めているバイオマス発電。本来なら破棄するはずの廃棄物を有効利用でき、さらにカーボンニュートラルの実現にもつながることから、敷地内に発電所を構える工場も増えています。今回はこのバイオマス発電の仕組みやメリットについてまとめました。

バイオマス発電とは

「バイオマス」とは「バイオ(Bio:生物)」と「マス(Mass:量)」を組み合わせた造語で、石油などの化石燃料ではない、動植物など生物由来の再利用可能な有機性の資源を指す言葉で、具体的には木材、紙、海草、プランクトン、動物の死骸、ふん尿、生ゴミなどがあげられます。

バイオマスは一般的に、以下の3つの種類に分けられます。

廃棄物系バイオマス

廃棄物として発生しているバイオマス資源。家畜の排泄物などの家畜資源、食品の加工残さや生ごみなどの食品資源、パルプ廃液などの産業資源、製材工場の残材や建築廃材などの林業資源、また下水汚泥などがあげられます。

未利用バイオマス

資源として利用されずに廃棄されているバイオマス資源。林地残材などの林産資源、稲わらやもみ殻などの農産資源などがあげられます。

資源作物

資源として利用することを踏まえて栽培されているバイオマス資源。サトウキビやてんさいなどの糖質資源。米やいも、とうもろこしなどのでんぷん資源。なたねや大豆、落花生などの油脂資源などがあげられます。

バイオマス発電とは、こうしたバイオマス資源を利用して電気を作る発電方法です。バイオマスはいずれも生物が生成するもののため、持続可能な資源という特徴があります。

こうした背景もあり、日本では地球温暖化防止、循環型社会形成、戦略的産業育成、農山漁村活性化などの観点からバイオマスの活用を推進する取り組みや行動計画を「バイオマス・ニッポン総合戦略」として2002年12月に閣議決定。さらに2009年には「バイオマス活用推進基本法」が制定されるなど、バイオマスは今後も注目を集めることが予想される資源といえます。

バイオマス発電の方法

バイオマス発電には、木材などを燃焼させて水蒸気を発生させタービンを回す「直接燃焼方式」もありますが、ここでは主に「生物化学的ガス化方式」について説明させていただきます。

生物化学的ガス化方式とは、酪農業で出る家畜のふん尿や下水汚泥などを発酵させ、その過程で発生するメタンなどのガス(バイオガス)を使って電気を作る発電方式です。このバイオガスを燃料にしてタービンを回し発電を行います。

生物化学的ガス化方式は資源を発酵させるため、水分を含んで燃えにくくなったバイオマスでも有効活用できるというメリットがあります。またメタンなどのバイオガスは発熱量が高く、発電効率が良いという特徴もあります。

バイオマス発電のメリット

生物由来の資源であるバイオマスを使った発電には、さまざまなメリットがあります。ここでは、その中でも代表的なものをご紹介しましょう。

発電量の安定性が高い

バイオマス発電の大きなメリットのひとつとして、安定した発電量を確保できるという点があります。持続可能な発電方法にはほかに太陽光発電や風力発電、水力発電といった方法もありますが、いずれも季節や天候により発電量が左右されるというデメリットがあります。発電量が安定しないと、供給量が少ないときは他の発電方法に頼ることになってしまいます。

バイオマス発電で使われる資源は生物由来のため、よほどの理由がない限りは供給が減ることは考えにくいという特徴があります。資源の量ではなく、電気の使用量にあわせて発電量を決めることができるのは大きなメリットと言えるでしょう。

廃棄物を有効利用できる

バイオマス発電で使われる資源は、家畜のふん尿や木くず、生ごみなどもともと廃棄物であったものがほとんどです。これらの廃棄物は人間が営みを行ううえで必ず発生するもので、廃棄するためにはコストやエネルギーを消費することになります。

こうした廃棄物をバイオマス発電として活用することで、不要なエネルギー消費をおさえるだけでなく、新たにエネルギーを生み出すことができるというメリットがあります。

CO2の増減がゼロになる

バイオマス発電には、カーボンニュートラルの実現につながるというメリットもあります。

バイオマスは燃やせば化石燃料と同じように二酸化炭素を排出しますが、それらはバイオマスが成長する過程で、水とともに環境の中から吸収したもの。バイオマス発電の過程で二酸化炭素を排出することがあっても、地球全体で見れば二酸化炭素の増減に影響を与えないとされています。このため、バイオマス発電はカーボンニュートラルの実現という点でも、大きな注目を集める発電方法なのです。

バイオマス発電のデメリット

持続可能、カーボンニュートラルの実現などさまざまなメリットがあるバイオマス発電ですが、一方でデメリットもあることに注意が必要です。ここでは、その中でも代表的なものをご紹介します。

資源の管理にコストがかかる

バイオマス発電のもととなる資源には木材、紙、海草、プランクトン、動物の死骸、ふん尿、生ゴミなどがあげられますが、これらは運搬や管理がしにくいといったデメリットがあります。こうした資源を運搬・管理しようとすれば他の燃料以上にコストがかかることになります。また、管理上の問題もありこうした資源を人の密集する地域に運ぶことは現実的ではありません。

そのため、バイオマス発電を行う場合はそれぞれの資源が発生する場所に発電所を設置する必要があります。

地球環境に優しい発電方法

バイオマス発電は酪農業の家畜ふん尿や工場の食品残渣といった産業廃棄物を活用できるため、酪農・畜産業や食品工場などで活用が進んでいます。地球環境に優しく、さらに廃棄物を有効活用できるなど多くのメリットがある発電方法といえるでしょう。

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