工場用水は製品の製造過程で欠かせない存在ですが、具体的にはどのような水か、また一般的な上水道との処理方法の違いなどについてご存知でしょうか。ここでは、工場を運営するなら知っておくべき、工場用水の処理に関する知識をまとめました。
工場用水とは、文字通り「工場の用に供する水」を指します。
工場を稼働させるうえで、量や質の違いはあれど水は必要不可欠なものです。機械の冷却用水をはじめ、容器などの洗浄用水、製品処理用水、原料用水、温調用水、ボイラー用水、工場内部の清掃など、水は工場のあらゆる場所で使われています。工場を稼働するために必要なこれらの水をまとめて、工場用水と呼んでいます。
工場用水は大きく「補給水」と「回収水」の2つに分けられます。補給水は水道水や井戸水、地表水(河川水や湖沼水)伏流水などの水源から工場内に引水される水を指します。これに対し、工場内で使用された冷却用水などの水を循環再利用するものを回収水といいます。
食品加工・飲料工場等における工場用水の水源としては、主に水道水、井戸水、地表水の3つがあります。一般的には工場規模が大きくなればなるほど必要となる水の量も増えるため、井戸水や地表水を使用する目的にあわせて一定の基準まで処理したものを工場用水として利用します。また、用途として問題がない場合は海水が工場用水として利用されるケースもあります。
井戸水などの地下水は大量に組み上げると地盤沈下の恐れがあるため、自治体によっては組み上げを規制しているケースもあります。その場合は、地方公共団体をはじめとするさまざまな事業者が供給する工場用水を利用するという選択肢もあります。
こうした工場用水は、基本的に給水区域内の工場を運営している事業体で、使用水量などの条件を満たしていれば誰でも利用することが可能です。ただ、工場用水の配水管から給水先までは、自分で給水管を布設する必要がある場合もあるため、給水先が工場用水の配水管から大きく離れている場合は注意が必要です。
一般的な家庭で使用されている上水は、河川水や地下水、湖沼水などを原水にしてろ過や沈殿、塩素消毒のほか、オゾン処理や活性炭処理などの高度浄水処理を行い、水質基準を満たした水が供給されています。
これに対し、工場用水は使用用途や供給する事業体によって処理方法が異なりますが、通常は水源から得られた原水を沈でん処理(一次処理)したものです。このため非常に安価で、大量の水を必要とする工場でもコストをおさえて利用できるメリットがあります。工場用水は砂や細かな不純物などは除去して供給されていますが、上水とは異なり飲用となるような処理を行っていないため、特に食品工場では冷却水など直接製品に接しない用途で使用されています。
また、工場内で使用用途にあわせて、さらにろ過などの処理を行って使用したり、もしくは地下水と同様に高度処理まで行い、製造用水として利用されることもあります。
用水処理を活用することで、工場にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な2つの理由について説明します。
先にもご紹介したように、水は工場を稼働するうえで必要不可欠なものです。そのため一般家庭などと比べて大量の水が必要となり、そのすべてを上水道でまかなっていたのではコストがかかってしまいます。
工場用水は沈でん処理(一次処理)のみということもあり、上水道に比べてはるかに安価で(価格は上水道と比べて数分の一ほど)供給されています。そのため、水を大量に使用する工場でもコストをおさえることができるというメリットがあります。
当然のことですが、工場用水は上水道と異なるラインで供給されています。そのため万一災害で上水道の断水が起こっても、工場用水のラインはそのまま使えるケースもあります。複数の水源を確保しておくことで、工場が稼働できなくなるというリスクを回避することができます。
また、こうした災害時に強いという工場用水のメリットを生かして、工場用水を飲料水として利用できるようなフィルターを提供している事業者もあります。こうしたフィルターを利用することで、災害時のライフラインを複数確保することができ、企業のBCP対策にも有効です。
工業用水処理を活用することでコスト削減だけでなく、災害時のリスクにも備えることができます。工場を運営するうえで欠かせない存在と言えるでしょう。
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